わたしとあなたのありのまま


 綾子が教室出入り口で待機中のてるやくんの元へと向かい、綾子に代わって田所が、私の正面の席にドッカリと腰を落とした。
 そうして向かい合って、ほんの束の間睨めっこ。


 田所は、ムッとしたまま、だんまりの私を、困った顔で見詰めていたけれど、突如、勢い良く机の上に両手をついてひれ伏し、額までくっつけた。

「ごめんなさい。
 俺、昨日の記憶ほとんどないんだよね」

「記憶ないなら、なんで謝るの?」

 わざと意地悪を言ってやった。


「てるやがさぁ、
 とにかくお前に謝っとけって言うから」

 伏したまま田所は答えた。

「ふうん。
 てるやくんに言われたからなんだ」

 私ってば、嫌味ったらしい。
 そんな自分がちょっと嫌。

 田所はソロリと顔を少しだけ上げて、私にじっとりと恨めしげな視線を寄越した。


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