わたしとあなたのありのまま


「俺、なんかほのか怒らせるようなことした?」

「別に」

 言えるわけがない、耳舐められたなんて。
 覚えてもいないやつに。


「じゃあ、なんで怒ってんだよ?」

 田所は早くも若干逆切れ気味。
 既に謝る気ゼロじゃない。

「怒ってない」

 そう答えながらも、田所を睨み付けていた。

「不愉快な思いさせたんなら、謝るって」

 何故ここで、上から目線?
 ムカつく。

 と、そんな私の不満を察したのか、

「かくなる上は、死んでお詫びを」

 言って、田所は切腹の真似をし、ガクリとうな垂れ、同時に両腕もダラリと垂らして動かなくなった。
 時代劇ごっこですか、といつものごとく呆れた。


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