わたしとあなたのありのまま
田所は、「てるちゃん、ベタだね~」などと腹を抱えて笑い出す。
いやいや、キミも確か私に、『俺待てるから』などというベタベタなセリフ、そのお口から吐きましたけれども?
「――って、あれ? てるやは?」
田所は今頃気付いたのか、出入り口を振り返りながら綾子に尋ねた。
「もう行った」
ムスッとしながらも、綾子が答えると、
「くそてる、自分だけ……」
悔しそうに言い、弾かれたように立ち上がった。
私も咄嗟に席を立ち、「ねぇ、田所!」と、出口へ向かう田所を慌てて呼び止めた。
田所は立ち止まって振り返り、「ん?」という顔をした。
「今日……
一緒に帰れる?」
さっき言いそびれた言葉を、恐る恐る口にした。