わたしとあなたのありのまま
「田所は『友達命』だな。
 小学生かっつーのっ」

 笑い飛ばすように言う綾子は、明らかに私を気遣っている。

 うん、綾子のその気持ちは嬉しい。
 けれども余計に惨めになるこの悪循環。
 胸がジンと痛む。


 その痛みを振り払おうと、

「ねぇ、綾子」

 無理矢理に声を出す。

 ん? と優しく応えてくれる綾子に、「てるやくん、綾子に彼氏がいること知ってたよ」と唐突な情報提供で流れを変えようとしてみる。


「どした? 急に」

 綾子は不思議そうに私を見た。
 流れを変えるという目論見は見事に砕け散った。


< 260 / 318 >

この作品をシェア

pagetop