わたしとあなたのありのまま
 遠くの方で、せなくんが警察チームの誰か(昨日のカラオケの時、確かに居たけれど名前は知らない)に追われて全力疾走している。
 その姿も、なんだかコミカルで笑えた。


「楽しそうだなぁ……」

 思わずこぼすと、「だろ?」と何故だか山田が得意げに言う。
 何なの? 偉そうに。


 背を向けていた田所が、校舎の方を振り返ってキョロキョロと辺りを見回す。
 どうやら、敵が背後から襲ってきはしないか、用心しているようだ。

 小学生がやるような遊びに、どこまでも全力投球。
 可愛い。


 と、熱い視線に気付かれたのか、視界の端に私たちが入ってしまったのか、どちらかわからないけれど、田所は突然目線をフイと上げ、一旦は逸らすも、すぐまたハッとしたようにこちらを見上げた。


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