わたしとあなたのありのまま


「なぁ」

 背後から声を掛けられ振り向けば、山田は、既に教室へ入ろうとしていた。
 いつの間に?
 眼下で繰り広げられている、くっだらないドタバタ劇を夢中で見ていて、全く気付かなかった。

 けれども山田は、身体半分をベランダに残したまま静止し、こちらを振り返るようにして何かもの言いたげな視線を私に向けている。


「俺、昨日マネージャーに告られた」

 言って、山田は照れくさそうに苦笑した。

「サッカー部の?
 へぇ、良かったじゃん。
 てか山田、自慢?」

 冗談っぽく言ったつもり。
 けれども、山田の表情が不意に曇る。

「俺、その子のこと、真剣に考ようと思ってる」

 山田は、私に気兼ねでもしているのだろうか。
 別にそんな必要ないのにな。

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