わたしとあなたのありのまま


「まだ怒ってんの?
 お前、相当しつこいな」

 田所は困ったように笑う。
 私が怒っている理由、わかっていないくせに。


「怒ってるよ。
 だって田所、『一緒に帰れない』って言ったじゃん」

「ああ、そっちか。
 状況が変わったんだよ。
 その辺はお前も臨機応変に……」

 最後まで聞かずにクルリと背を向け、再び歩き出した。

 拗ねているんだ、私。
 そんなガキくさい自分が、嫌になるけれど、この苛立ちをどうにも自分で処理できない。


「チッ」

 舌打ちが聞こえたと思ったら、私の身体が宙に浮いた。
 お腹には田所の右腕が巻きついていて。

 私は背後から田所に抱き上げられていた。


< 275 / 318 >

この作品をシェア

pagetop