わたしとあなたのありのまま
「黙れ、山田。
 私はもう、あんな悪党のことは、なんとも思ってないんだからね。

 田所なんか、絶対見ないから。
 なにがあっても、絶対見ない。
 例えあいつが全裸でサッカーやってたって、絶対に見ないんだからね」

「秋山さんたら、昼間っからシモネタ?
 欲求不満かしら? イヤだわぁ」

 山田がふざけた女口調で言った。

 『全裸でサッカー』発言は、我ながら『痛い』と思った。
 山田は多分、冗談のつもりだろうけど、欲求不満と言われて、返す言葉がない。


 一週間前の食堂でのことを、私は未だに引きずっている。

 田所への気持が、田所にとって迷惑だと知って、諦めなきゃと思うけれど、上手く自分の気持がコントーロールできず、無性にイライラする。

 まるで私の頭の中を覗いたかのように、

「なぁ秋山、田所のこと諦めんなよ。
 負け戦とわかって、雄々しく挑む秋山、俺は好きだぜ」

 山田が唐突にそんな事を言う。


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