わたしとあなたのありのまま
 サッカーコートを振り返るようにして、ボーっと見とれていたら、何やら背後でプレイ中の女子が騒ぎだして、
 その声に反応した田所が、こちらに視線を寄越す。

 ヤバい、また田所を見詰めていたと気付かれたら、後で何言われるか……

 でも、田所は怒るというよりは驚いたように目を見開いて、試合を放棄して私に向かって走り出した。


 その時、私の脳がようやく、背後から聞こえる女子たちの大声を、その言葉の意味を把握した。


「ほのか、危ない!」


 その声に振り返った瞬間、側頭部に強い衝撃を受け、辺りは真っ暗闇に包まれた。



 これは夢でしょうか。
 何故だかわからないけれど、私が田所にお姫様抱っこをされている。

 田所はもの凄い形相で、私を抱えて必死で走っている。
 私、重いのに……


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