わたしとあなたのありのまま
結局、ここへ来るまでずっと、田所と携帯で繋がっていた。
もちろんその間も、道順の説明の合間に、いつものくだらないやり取り、というかプチ口論が絶えなかった。
そして私、4回ほど、キレました。
でも……
もしかして、この近辺は人通りも少ないし、時間も遅いし(といってもまだ8時半だけど)、私のことが心配だったとか?
まさかね。
部屋の前に立つと、
「ドアの横にボタンあるだろ?
それ押して」
と田所は言う。
「インターホンじゃん」
と愚痴りつつも、それを押す人差し指は期待と喜びに震えていた。
つくづく、
私ってバカだなぁ、と思う。
ドアがゆっくり開き、会いたかった人が目の前に現れて……
思わずニヘッと笑ってしまった。