わたしとあなたのありのまま
「いや、うるさくて迷惑かけるかも、とか思って」

「気にしないで。
 私の方こそ、いつもゴメンね」

 最後にとびきりの笑顔を私たちに残し、ゆきさんは部屋の中へと消えた。


「なに今の?
 宇宙語?」

 怒った風を装い、田所に文句を言った。

 田所はほんの一瞬、冷ややかに私を見下ろし、すぐにプイと背を向け何も答えずに部屋の中へ入ってしまった。


 本当にコイツは……
 腹が立つ。

 このまま大人しく帰ってなんかやるもんか。
 乱暴にドアを開けて勝手に侵入してやった。

 田所はそんな私を無視して、ズカズカと奥の寝室へと向かう。

 田所の部屋は、簡素な1DK。
 玄関から室内全体が見渡せた。


 一人暮らしなんだ。

 高校生で一人暮らしだなんて、未だかつて聞いたことがない。
 だからとても驚いた。


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