わたしとあなたのありのまま
 ゆっくりとこちらへ歩いて来る田所に、

「なに?」

 と聞くと、「送るわ」と当然のようにすまして言う。

 逃げ出そうとした卑怯な私に対しても、田所は優しい。


 田所の正面に立ち、両手で押すようにして強引に立ち止まらせた。

「いいよ。
 そんなんだったら、最初から自分で買いに来ればよかったじゃん。
 バッカじゃないの?」

 言ったら、一滴(ヒトシズク)、涙が頬を伝った。


 慌てて俯いた私に、

「ほのか?」

 田所が身を屈め、不思議そうに私の顔を覗き込む。


 どうして涙なんか……
 田所の方がきっと、私なんかの何倍も辛いはずなのに。


「お願い来ないで」

 やっとのことでそう言い、踵を返して部屋を飛び出した。


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