わたしとあなたのありのまま


 一階へ降りる階段手前で、私と同じ年頃の男の子とすれ違った。

 金に近い茶髪、耳にはピアス、服装もちょっと派手めだけれど、着こなしが上手だからか、違和感はなく自然な感じに映る。

 服装などは全く正反対だけれど、その顔が、どことなく田所に似ている気がした。


 私と目が合うと、彼は戸惑いながらも軽く会釈をした。

 彼のそんな感じ良さも、今の私には癪に障った。
 だから、会釈を返さずに無視して通り過ぎた。


 階段の途中で振り返ると、その男の子はインターホンも押さず、ゆきさんの部屋へと入って行った。


 ゆきさんの彼氏かな。
 だとすると田所はまた、聞きたくない声を聞くことになるのかな。

 田所があのまま、爆音で音楽を聞いていてくれたらいい……


 そう思った。


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