わたしとあなたのありのまま
「行こう、ほのか」

 不穏な空気を察したのか、綾子が私の腕を掴んで引っ張る。

「え? あ、うん」

 私もエリカ先輩を無視してトイレを出ようとした。

 何を知りたいのかわからないけれど、
 面倒臭いことは御免だ。


 でも、エリカ先輩にもう片方の腕を掴まれ引き留められた。
 私の腕をきつく握ったまま、エリカ先輩は綾子に向かって、

「聞こえなかった?
 彼女に聞きたいことがあるの。

 あなただけ行って」

 と冷ややかに言った。


 エリカ先輩は見た目通り、気が強い人だなと思った。

 『綺麗な薔薇には棘がある』
 そんな言葉を思い出した。


< 93 / 318 >

この作品をシェア

pagetop