わたしとあなたのありのまま


 私たちは見詰め合ったまま、その場に立ち尽くしていた。

 私を引き留めておいて、どうしてエリカ先輩は何も言わないのだろう?

 このまま沈黙が続いたら、耐えられそうにない。
 だから、仕方なく私から切り出した。

「聞きたいことって何ですか?」


 エリカ先輩は、ようやくその顔に感情を露わにした。
 とても悲しそうに、その綺麗な顔を歪めた。


「悠斗のこと、好きなの?」

 私を真っ直ぐ見据え、静かな落ち着いた声で問う。

 怒ってはいなかった。
 エリカ先輩は悲しいのだ。


「はい」

 答えると、エリカ先輩は目を見開いた。
 エリカ先輩の瞳がふるふると揺れ、綺麗な雫を湛えた。


 けれども私は、これが山田が言っていた『泣き脅し』か、と冷めた気持ちになった。
 そんな姿を見たって、私の中に同情など生まれない。

 無駄だよ。


< 95 / 318 >

この作品をシェア

pagetop