わたしとあなたのありのまま
「お願い。
 これ以上、悠斗に近付かないで」

 エリカ先輩は、その美しい顔を少しも崩さず、目からポロポロと涙をこぼした。

 綺麗に泣く人だなと思った。
 私の泣き顔なんか、いつもグッシャグシャなのにって。

 だからその全てが、
 作り物のように感じた。


「私別に、意識して田所に近付いているわけじゃ……」

 困ったな。
 どう対処して良いかさっぱりわからない。


「とぼけないでよ。
 色々聞いてるんだから。
 
 体育の時間にわざとボールに当たって倒れて、保健室まで悠斗に運んでもらったり、

 嫌がる悠斗を無理矢理どこかへ連れてって、コソコソ告白したりしてるじゃない!」

 その捻じ曲がった情報、一体どこから入手したのですか。


「悠斗はあなたなんかに渡さない」

 エリカ先輩は、キッと私を睨み付けて、強い口調で言った。


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