たった一人…。
出会い。
あなたとの時間は衝撃だらけだった。
私(柿田奈央)26歳。彼(豊広秀人)50歳。
私が彼と出会ったのは、今から六年前。
私が勤める事になった運送屋のバイト先の上司だった。第一印象は、不真面目そう、軽そう、遊んでそう…
どれも真似してはいけないお手本ばかりのような感じだった。
面接の時も、平気で『タバコ吸う?』なんてため口で。
ちょっとコーヒー買ってくるから待っててって言って、15分も放置されたし。
それでも、採用してもらえた事がとても嬉しかった。
その日の夜はドキドキとワクワクとでなかなか眠れなかった。
バイト初日の日、私は緊張しながら出勤した。
「おはようございます。今日からよろしくお願いします。」
「お疲れさん。これ、今日から着てもらう制服ね。さっそくだけど、荷物持って来てくれる?」
簡単に挨拶を済ませたのちに私は初めてもらった制服と荷物を持って車に乗り込み移動を始めた。
初めての彼の車。
男の人の助手席に乗るってこんなに緊張するもんかな。
移動中、車の中でいろんな話をした。
前に勤めてた仕事とか、家族の事とか。
彼には妹との二人兄弟だという事。
今でもとても仲良しで、よく連絡を取り合ってるらしい。
二人の息子が居て、上の子は私と同じ年だという事。
そんな話をしながら、一時間半位で着いた。
着いた先は新しそうなアパートの駐車場。
「あの…。」
「ここ、俺の家。」
不信感と疑問と不安とで心の中がいっぱいになる。
さすがに私もバカじゃない。
あからさまに私の表情が険しくなる。
「すまん、すまん。今日は俺んちで留守番を頼みたいんだ。業務といっても出来る事がまだ無いしな。
俺は今から前のアパートを引き渡しに行ってこなきゃいけなくて。」
…。
なんだ、そういう事か。
「ふぅ。わかりました。じゃあ、掃除でもしときます?」
「わりぃ、頼むな。それから、留守中に業者がベッドとテーブル持って来るから適当に入れてもらっておいて。」
そういうと、そそくさと出て行った…。
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