たった一人…。
二人。
気づけば季節は秋。
相変わらず、香理とファミレスでの女子会。
「ねぇ、最近どうよ。」
ニヤニヤと私の顔を覗き込む。
「どうって…。特に進展もなく、荒波もたたずって感じ?」
『ふ~ん』と、つまらなそうな顔をした。
「何を期待してんのよ!残念でした(笑)それより、香理はどうなんよ?」
実は、香理も私と同じ。
同じ会社に既婚者の彼氏がいる。
相手が本気じゃないのも分かってるらしい。
彼氏との将来が無いのも分かってると私に言う。
私達は切ない恋をする女。それでも、その一瞬を幸せだと思いながらそれぞれの彼と過ごす。
いつの間にか、私は仕事を教えれるようになっていた。
今までは配達ばかりやっていたが、管理もするようになり営業所内での作業や他の営業所へ行く事も多くなった。
その分、彼と2人で過ごす時間も増えた。
時には営業所の巡回を兼ねて、あちこちの営業所に立ち寄りながら、道中のドライブも楽しんだ。
最近はこれが私達のデートになってたりする。
間違いなく、彼と一つになる事は以前よりも増えた。
ただし、仕事モード、プライベートモードのスイッチをお互いに気をつけ、切り替えていた。
前のような失敗はもうしない。
それが2人のルール。
そして、おたがいの服に隠れた愛の印。
2人で過ごす時間が長いほど、その印は絶える間もなく、増え続けた…。
そして、忙しい時期がやってくる。その時ばかりは仕事モードのスイッチが入ったままになる。私も以前のように朝から配達に出るようになった。
そして、彼もまた、あちこちの仕事に振り回されていた。離れていても、彼には私の動きが見えている。
会えない日もこの時は必然と増えてくる。
そんなある日、彼はいつものスーツじゃなく作業服でやってきた。
そして、来るなり……
「柿田、コーヒー。」
と言い、2階へ…。
何か機嫌悪い…?
恐る恐る、コーヒーを手に2階へあがる。