たった一人…。
私は部屋から出た。
耐えれなかった…
彼の事を見ては居られなかった。
ねぇ、どうして泣くの?
そんなに悲しい事があったの?
聞きたい。
でも、聞いてはいけない気がした。
でも、耐えれなかったのは私だけじゃない。みたい。
すぐに彼も部屋から出てきた。
何事もなかったかのように。
涙が流れた事もなかったように…。
「すまん、すまん。そろそろ送るよ。」
私は小さく頷き、荷物を持って部屋を出た。
彼の顔を見たくない。
彼の背中も見たくない。
私は彼の前を早足で歩いて、車に顔を隠す。
車に乗り込み、走らせる。
静かな車内。
夕日が二人の顔を照らす。
夕日で照らされた彼の横顔はより切なそうな顔をしていた。
無言…。
無音…。
少し緊張してる私の鼓動が音として聞こえてしまいそうだった。
結局、帰りの道のりは無言のまま。
家まで着いてしまった…。
「あの…ありがとうございました。」
「あぁ。こっちこそサンキュ。助かったよ。またな。」
その日の夜、ベッドに転がった私は目を閉じた。
目を閉じると彼の姿が映る。
あの寂しそうな目が。
流した涙が。