たった一人…。


私はその日、夢をみた。



海辺に立ってる二人。
波の音だけが聞こえる。


『おまえが好きだ…』



『私も…』




私とキスをする…誰?
顔が見えない…。




……目が覚めた。



「はぁ。」

自然とため息が出る。




私の頭に一瞬、彼の事が…。


彼のあの顔が…。


今日は彼と会いませんように。。。




それから彼とは一緒に仕事をする機会もなく、私は先輩たちに仕事を教えてもらいながら覚えていった。



あの夢に出てきた人が彼だと思ってしまう私がいる。

きっと彼と会うとドキドキする…。


機会がなくて、良かった…。




今日は久しぶりに彼との打ち合わせ。

職場に着く前から私はドキドキしていた…。

自然と呼吸が速くなる。



営業所に着くと、すぐ彼の姿を探した。



すると、外にある喫煙所でタバコを吸いながら電話で話してる。



「あっ。」

気付いた。


彼は右手で私に手招きする。


彼の側で少し緊張しながら待つ。


タバコでも吸おうかな。

やばい!タバコを持つ手が震えてる。

落ち着け、私。



「お疲れさん。頑張ってるみたいだな。所長が誉めてたよ。」


「あ、ありがとうございます。何か久しぶりですね。」



「あぁ。今日は同行だから、支度したら行くぞ。」



そういうと彼はタバコを消し、立ち上がった。
仕事モードのスイッチON。


それにつられて私もタバコの火を消し、そそくさと営業所を後にし、車を走らせる。


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