たった一人…。



……1時間後………。



意識朦朧とする中で、見覚えのある懐かしい車が近くにくる。


「秀…。」
彼は車から降りて、私の方へ走って駆け寄ってきた。
あまりにも酷い私の姿を見て、着ていた上着を私の肩からかけてくれた。


「とりあえず、車に行こう」
そう言うと、私の肩に手をおく。


彼の手だと分かってるのに体に触れられると怖さがよみがえる…。

私の体の反応に彼は気付き、今度は私の手を強く握る。そして、私の顔を見つめる。


「ごめん、ありがとう。」


それ以上の会話はないまま車を走らせ、アパートに着いた。懐かしい彼の部屋。


なかなか車から降りようとしない私を、彼は抱えるように部屋の中へ連れて入る。



黙ったまま、何も聞こうとせず、ただ側に居てくれる。

そんな無音の空間が耐えられなかった。
怖かった…。



「シャワー使うね?」
私は沈黙を破り、お風呂へ行った。



……汚い……。
……私は汚い……。



何度も何度も体中を擦り、皮膚が赤くなってもまだ洗い続けた。



お風呂場にあるカミソリを手に握り、その場に座り込む。

持つ手が震える…。



…ガチャ…。



「何しよんか!」

握られたカミソリは私の手から離れ、転がっていく。
同時に私は大声をあげて泣いた。
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