たった一人…。
彼のシャツとズボンを着て、部屋のソファに座る。
彼の香りが私を包み、少しだけ安心する。
彼は何も言わず、ただ隣に座り私を見つめる。
私から話すのを待ってる…。
「私…。今日会議で。上司の車に乗ってて、帰りに立ち寄ったところの駐車場でドアをノックされて道を聞かれたの。その時、上司は飲み物を買いに車から離れてて。そしたらいきなり男達が…。」
「…。私、レイプされたの。」
小さく声を震わせながら言った。
精一杯、今の私にはこれが精一杯。
男が大山という上司の名前も、彼の名前も言ってた事も…。
彼は黙ったまま拳を握りしめ、肩をふるわせていた。
そして、
「俺が帰るまで一歩も外へは出るな。誰か来ても出るな。」
そう言って、バタバタと彼は出て行った…。
彼の顔、凄く怖かった…。
1人残された部屋で無音の中、時間だけが過ぎていく。
1人で居る部屋は何だかとても寂しく不安な気持ちになる。
彼のパジャマを抱きしめ、ソファーに座る。
ちょっとでも彼が近くに感じられるように…。
ちょっとでも不安が安心にかわるように…。
そのまま、夜になっても彼は帰って来なかった。
結局、彼が戻ってきたのは明け方。
彼は何も話さないまま、「とりあえず寝ようか。」と私の手をひき、寝室へ…。
しっかりと握られた手、隣に彼の体温と吐息を感じながら私は眠りについた。