たった一人…。

中に入ると、周りが声をかけてくる。

同じ部署で働く人達なんかは特に。


あ。香理だ。

そういえば、ここんとこ連絡してなかったな…。


「ごめんね。連絡しなくて。」

「うん。どうしたん?大丈夫?」


私は返事が出来なかった。
話すべきか、話さないべきか…。

だけど、香理は信用出来る私の友達。


「あのね、聞いてほしい事があるんだ。」

私の真剣な表情を見て、何かを感じとったのだろう。

「じゃあ、今日仕事終わりにいつものファミレスで。」


私は頷くと、自分の業務を始めた。

休んでいた間にいろいろとやる事が溜まっている。

1人、溜まった仕事を抱えて2階の事務所にあがった。


はぁ、良かった。誰も居なくて…。


ガチャ…。

たかがドアの開く音でさえも体が反応してビクッとする。


「お疲れさまです。」

初めて見る人だ。しかも、女性。

「あ、お疲れさまです。もしかして、柿田さん?」

「はい。」

少し近づいていくと、

「後任できた江本です。よろしくね。」


ん?
後任って事は、支店長さん?

大山、本当に居なくなったんだ…


後で聞いたら、大山は自主退職という形で会社を辞めたらしい。
他の奴らも社員だった事が分かり、全員退職となった。



「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」


良かった、女の人で。
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