たった一人…。
「うん。でも、他に連絡できるだけ人が居なくて…。香理はきっと田村君と一緒だと思ったから。田村くんには知られたくないし。」
それから、香理にたくさん話した。
香理は「うん、うん。」ってずっと聞いてくれた。
でも、あの事の原因に彼が関わっている事は話さなかった。
誰かに話せば楽になるかと、少しの不安くらいは取り除かれるかと思ったけど、全然ダメだった。
むしろ、話せばその分思い出してしまって、周りの話し声や物音に敏感になる…。
「香理、ごめん…。誘っておいて悪いけど、帰るよ。
何だか、気分悪くて。」
「うん、良いよ。そっか、いろいろ大変やったんよね。
遠慮とかいらないし、いつでも連絡してよね。」
「うん、ありがと。」
それから香理は家まで車でついてきてくれて、帰って行った。
今日は何だか体が怠い。
疲れた…。
ベッドに横になり、そのまま目を閉じた。
その日の夢は、久しぶりに彼とのものだった。
とても切なく、とても悲しい…。
涙が頬をつたうのが分かり、目を開ける…。
彼の事を考えなくても1日が過ごせるようにやっとなったのに、今日は朝から彼の事で頭がいっぱい。