たった一人…。

私の手に戻ってきた財布。

ギュッと握りしめて、ちょっとだけ嬉しさと幸せを感じる。

加奈さんが買ったっていうコーヒーがちょっと腹立つけど。

私はコーヒーと財布を持って2階にあがる。

凄い緊張してるのが、自分で感じる。

きっと、口から心臓が出そうってこの事だ(笑)


静かに部屋に入ると、彼の姿がない。

おそらく…。喫煙室。

喫煙室に入り、彼の近くに座る。


寝てる…。


前にもこんな事があったっけ。

私はテーブルに置いたコーヒーを少し飲んでみた。
そうそう、いつもの味。
毎日、これを飲んで彼と同じ香りにして1日が始まるんだよね…。

あ!
携帯を取り出して、寝顔をカシャッ。

やった!久しぶりの彼の写真だ。


「寝顔、撮ったろ。」

目を開けた彼はそのまま私を抱き締めて、キス。

私は動けずに、ただ彼に抱きしめられ唇を塞がれる。

唇が離れた瞬間、現実に戻される。


「疲れてるんだね?」


私の顔を見て、

「まぁな。」
と、笑ってくれた。

テーブルに置いたコーヒーに手を伸ばして飲み、

「覚えててくれたんだ?」
と、もう一度私の顔を見る。


「それ…、江本さんが買ったんです。」

「あぁ、そうか。おまえじゃなかったか。」

「いや。私も覚えてるし、毎日私も同じの飲んでるよ。」


目が合った瞬間、恥ずかしくて顔が熱くなった。


今のこの時間、すっごく幸せ。

一緒に居るだけで、一瞬で前のように戻れる。

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