たった一人…。

やっぱり、私は彼の事が好き。

でも…。


「聞いてもいい？」

「うん、何か？」

「さっき、江本さんが秀人って呼んでたけど。どうして？前に話してくれた彼女ってもしかして…。」

彼は大きくため息をついて、

「あぁ。」

と頷いた。やっぱり…。

「彼女」って江本さんだったんだ。


「すまんな。こうする以外に手段がなくて。」

「え？手段って。」

「おまえが仕事に復帰した時に、少しでも過ごしやすいようにって考えたら上におくのは女の方が良いと思って。
でも…。そうなると、あいつ位しか推薦できるような奴が居なくて。」


そうだったんだ…。
私の知らないところで、そんなに彼がいろいろと動いてくれてたなんて。

全然、知らなかった…。


彼はタバコを取りだし、火をつけてゆっくりと吸い込む。煙を吐き出しながらもう１度ため息をついた。

「どうしたの？」

「いや、やっぱりあいつを来させるんじゃなかった。」

「どうして？」

「俺とあいつの関係を知ったら、過去とはいえ、おまえが傷つくのが分かってたから。
すまんな。」

「ううん、そんな事ないよ。秀がそんなに気にかけてくれてたなんて知らなかった…。
いろいろとごめんね。」

「そういえば、今日は何でこっちに来たの？」

「おまえが復帰したの知って、気になったから。立場利用してちょっと来た。」