たった一人…。

そっか…。

加奈さんが彼女だったって事は事実なんだ。

そういえば、前に彼女と別れた理由は子供の事だからって言ってたもんね…。



『どうして別れたの?』

『あぁ、あいつが一番つらい時に側に居てやれなかったから。』

『つらい時って…?』

『子供をな…。』




ゆっくりと二人に近づき、

「あの、これ…。」

「おぉ、サンキューな。」

「いえ、私仕事に戻りますので。加奈さん、お大事になさって下さいね。」

私は飲み物を2本渡すと、すぐ二人の側から離れ急いで車に乗り込んだ。


決して、彼に涙が見られないように。



その後、しばらくの間の記憶があまりない。

ふと我にかえると、車は海沿いに停めていて、左手にはカッターを持ち右手首から血が出てる。

あれ、腕からも出てる…。

無意識のうちにリストカットをしていた。

1、2、3、4…。
何回切ったんだろう。


私の体と心には、たくさんの傷が増えた…。


< 68 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop