たった一人…。
何かを喋れば、それだけ自分の体が反応する…。
ただ同じ車に乗っているだけなのに、隣に彼の姿があるというだけでドキドキする。
自然と汗が出てくる。
汗ばんだ手をズボンで乾かし、緊張をごまかす。
自然と無口になってしまう。
「さ、着いた!」
嬉しそうに彼が車から降りていく。
とても無邪気に、子供みたいに。
私もその後を追いかけるようについていく…
「すご~い!何これ!!」
私の目の前には真っ青な海が広がっている。
とても同じ県内だと思えない位に透き通った水面。
「だろ?俺の一番好きな場所。一番、特別な場所。」
ほら…またあの顔。
私はこの顔に弱い。
どこか遠くを見つめ、寂しそうな顔をする。
ただただ、彼の横顔見る事しか出来なかった。
近くに教会があるらしく、私を案内してくれた。
「もしかして…。ここでプロポーズとかしたの…?」
「は?…あぁ、彼女にな。」
「………」
「彼女と、どうして別れたの?」
「……俺が傍に居てやれなかったから。あいつが一番辛い時に…。」