たった一人…。

ある日、私は風邪をひいて仕事を休んだ。

はぁ。。。

熱が38.8℃。病院に行かなきゃ。でも、動けない。


結局、家にあった市販の風邪薬と栄養ドリンクを飲んでずっと横になっていた。


ピンポーン。

誰か来た。

動きたくない…。

そのまま玄関へは行かず、居留守する事にした。


…ガチャガチャ。

!誰か勝手に入ってきた!

怖くて、逃げ出したくて。
走って台所に行って、包丁を握りしめた。


ゆっくりと扉が開く。


「おい!何しよんか!」

そこには彼の姿。私は力いっぱい握りしめた包丁を床に落とし、そのまま座り込んだ。

全身は震え、涙がとまらない。

彼が走って駆け寄り、私の体を強く抱きしめる。

「ごめん。怖がらせて。」

そのまましばらく抱きしめたまま、私の頭をゆっくり撫でてくれた。


「どうして?」

「体調悪くて休んだろ?」

「それで、わざわざ来てくれたの?」

「もちろんだろ。でも、結局怖がらせたな…。」

「…。ごめんなさい。だって、勝手に玄関開けて入ってくるから、泥棒かと思って。」

「俺は泥棒か(笑)前に、鍵くれたろ?これを思い出してな。」


そっか。昔、彼と合鍵を交換したんだった。


私は彼の部屋の合鍵は、今はジュエリーボックスに入れてある。封印のつもりで。


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