たった一人…。


「聞いてもいい?辛い時って…?」


「あぁ、子供をな…。」





そうなんだ。
きっと、子供を亡くしてるんだ…。




そのまま彼はうつ向いて黙ってしまった…。



はぁ。聞くんじゃなかった。

私はたまらず、彼の背中にもたれそのまま手をまわした。



「私じゃダメですか?彼女の代わり…私、あなたの事が好きです。」

彼の背中に向かって喋った。

今の私の精一杯の勇気。
精一杯の優しさ。




言っちゃった…。




「自分が言ってる事わかってんのか?誰かの代わりなんて辛いだけだぞ。俺は嫁も前の彼女も幸せにはしてやれなかったし、おまえがわざわざ不幸を選ぶ必要はない。」


声が震えてた…。


「じゃあ、今、幸せですか?辛い過去を背負って、それから抜け出せずにいて。そんな姿、見たくないんです。私はその気持ちを半分でも受け止めたい。私は不幸なんかになりません。」


私は真剣な顔で彼を見つめた。




すると、彼の目から涙が…


そして、私の胸に顔を埋めた。


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