先生と生徒の恋愛小説【短編】

新しい場所

〈新しい場所〉



この春からいつもと違う場所に行く。



スーツも買って
バックも買って
おしゃれもして…


気分は明るいはずなのに
まだ実感も湧かないし
寂しい気持ちもある。



だってそこには先生はいない。



職員室前の廊下
よく二人で座ったベンチ

もう偶然じゃ会えなくなっちゃった。
もうその場所は思い出になっちゃった。




大好きな曲が着信を知らせた。
大好きな曲は大好きな人の着信。


「…はい」
『あ、俺…』
「…せんせぇ…」
『どーした?』
「なんか…寂しくなった」


嬉しい。
以心伝心なのかな?
先生の声は最高の癒やしだよ。


『俺も寂しい。衣咲が学校にいないんだもん』
「ホントに?」
『うん。でもこれからは学校じゃなくても会えるだろ?』
「うん!」
『あ、また二人でお祝いしよう。いつ会える?』
「週末は?」
『うん、いいよ』
「ふふっ…早く週末にならないかなぁ」
『俺も楽しみだよ…あ、ごめん。誰か来たみたいだから切るな?』
「あ、うん。じゃあね」
『バイバイ』




私には先生がいる。

手を伸ばして
やっとたどり着いた先生の隣。


先生の隣が
私の新しい場所。




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