小春日和


そう言った彼女の言葉にはたぶん、嘘偽りがなくて。

ふいに涙が溢れだしそうだった。


「だからさ、こうやって卒業式が迎えられて、高校にも行けて幸せだなって」

「………うん」

「あぁ生きててよかったなって思うの」

「………うん」

「健」

「…何」


「生まれてくれてありがとう」


嗚咽交じりの話声。

写真のシャッター音。

笑い声の響く校庭。


『春の笑った顔。』


全部忘れないように

もう一度目を閉じた―――




END

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