これはあなたへのラブレター


10時になって合奏がはじまった。


たくさんの楽器のおとが
身体中に響く、この感覚。


仮引退以来ずっと感じていなかった、この感覚のなかに
いつもとは違う
心地よさを見つけた。



低く、あたたかい
私の大好きな音。


純くんの奏でるあの音。



その音を聞くだけで私の胸は高鳴った。


純くんの低音に混ざって
私のいつもより大きな鼓動が
からだのなかに響く。


……心地いい。



純くんの音を聞くだけで
こんなにもドキドキしてしまうなんて、
私、変態なのかも………


そんなことを思いつつも
ドキドキは止まらずに勢いを増す。


視界の端で
一生懸命楽器を吹いている純くんが愛しく思えて仕方ない。


…やっぱりわたしは変態だ。


毎年吹いているはずの曲なのに
今年、はじめて
低音を聞いた。


いつも気にせずに吹いている低音を、
純くんを好きになって聞けるようになった。


だから今年はいつもより
音楽の流れにうまくのって
吹くことができた。



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