光と闇
「なにか、話を聞かせてください。いつもみたく。」
明るい声で彼女はいった。その声で、少しほっとした。

大した話なんて出来ないのに毎回彼女は、僕の話すことを聞いてくれた。僕の話しなんてちゃんと聞いてくれる人がいなかったから嬉しかった。


僕らはたくさん話をした。少し会わなかっただけなのに、話はつきなかった。
この時間が、永遠に続けばいいのに…
何度願ったことか。
何度祈ったことか…。

もうじき終りが来てしまう。二人ともそれは嫌と言うほど感じていた。しかし、“それ”を言ったら全てが崩れてしまう。
だからお互いに言うことをしなかったのだろう。僕らは逆の世界にいながら、運命共同体なのだ。


自分の声がかすれて来た。もうこの体は限界なんだと、冷静に判断した。
声がなくなる前に、消えてしまう前に、彼女に伝えなければいけないことがあった。


「…ヒカリさん。」
彼女の話を遮り、名前を初めてよんだ。
不思議な感じがする。

「大切な時間を僕にくれてありがとう。とても幸せだった。
今までで一番幸せだった。本当にありがとう。」

見ると、彼女の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。

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