光と闇
「なんだか僕も良くは分からないんだ。
ただ、色々混じったあの雨の空気が肺に合わないらしくてね。長時間あの中にいると、呼吸やら体の機能が上手く出来なくなるらしいんだ。


だから晴れの日と、曇りの日は病院に行くようにしていた。
けれど、ここ最近は雨のときも出かけていく。止めてもよっぽど体調が悪いときにしか言うことを聞かない。
なぜか理由を聞けば、君のことを話してくれた。
けれどやはり、行くのを止めたよ。寿命を縮めるだけじゃないか。
そしたら、
“どうせ私は長くは生きられない。だったら、きちんと後悔なんてしないで死にたい。
家にいてばかりじゃ、何も出来ない。何もしないで消えたくはないの。
だから私は、会いたいあの人に会いに行くの。”と言ってたよ。」


世界が一気に溶けた。足元が闇に飲まれ、崩れるのを感じた。



「どうして…僕を選んだんですか…?」


「君が、ヒカリと似ているものを持ってるから。だからだよって、それしか言わなかった。」


そういうと、彼女の兄から、一枚の白い紙切れを渡された。

「あとは君次第さ。会うのも、会わないのも。」

そういうと、男は静かに微笑んで去っていった。

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