小指心
「ちょっと、どうなの?キスはし―――――


蓮は私に強引なキスをした。

なんだか慣れていないようだったけど、私には甘く。

ほんの一瞬、だけどそのキスはもの凄く長く感じて。
まさか本当にするなんて。



・・・不意打ちなんてされたこともなかった。



「ぅそ・・・」

「・・・これで良いんだよな」

蓮は口を拭いていた、確かに好きでもない人とのキスは嫌だろうけど・・・
そこまでしなくても良いじゃないか。

正直、私にも乙女心というものはちゃんと備わっている。


「・・・」


「南朋さん」

あ、また『さん』付け。
なんだかいつものことなのに、心地悪く聞こえた。


「このこと、一馬くんに言わないで下さいね」


私の頭は真っ白で、今蓮が言ったことは口パクにしか見えなかった。
でも、これだけはハッキリ聞こえる。



「それと、梓ちゃんをいじめたりしたら・・・ただじゃおきませんから」



「・・・待って」

「はい?」

「私は・・・『ちゃん』付けしてくれないの?」

「・・・それは梓ちゃんだけ」


・・・そういって蓮は私を置き去りにして歩いて行った。


―――――――――――


「小山・・・くん?」

私は見てしまった、姉ちゃんを泣かしたウザったい南朋というヤツと。
隣に住んでいる、小山くんがキスしているところを。

しかも、あれは完璧に小山くんからのキスだった。

「なにやってるの、あの二人・・・」

私は本当に目を疑った。
悪い幻覚でも見ているのだろうか、それとも私の目が倍に悪くなったのか。


どちらにせよ、これは現実らしい。


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