小指心
「しかも、こんな好都合。めったに無いと思うけど私は」
様乃はカバンからまた違う本を取り出した。
タイトルは『5秒でモテ女法』。
「なめとんのか?」
「なに言ってんの、この本って今すごい売れてるんだよ?ちょっと梓も読んどいた方が良いよ」
「別に私そこまでモテてないわけじゃないよっ!」
「まぁ・・・今はモテてても、後から若いのにスカっと取られるんだよ」
「言い方を変えて、なんだかそれじゃあ私達が古い様に聞こえる」
一体なにを考えているんだ・・・5秒でモテ女になれるんなら世話ねーっちゅーの。
ていうか、なんでそんな本を学校に持って来てるんだ。
「ま、これは置いといて」
「今度はなに」
「いや、その私が言う『好都合』っつーのは・・・ちょっと梓のネタ帳貸して」
「暇つぶしノートね」
「どっちでも良いじゃん」
様乃はペンケースからボールペンを取り出した。
あ、ちょっと待って。
「ボールペンはダメ、シャーペンにして」
「・・・(ため息)」
そうすると様乃はボールペンをシャーペンに変えてノートに書き始めた。
・・・なにこれ。
「字が読めない・・・」
「ぇ、こんな漢字も読めないのっ?」
「違う、様乃の字が汚―――――
「で、こうなるわけよ」
「ぁ、私はスルー?」
カチカチカチカチ
「・・・」
え、ちょっと待って。
真剣に書いているところ、悪いんだけど。
「これ、マジでなに?」
「なにって・・・四角関係?」
「いやいやいやいやいやいや」