小指心
「梓ちゃん涙・・・」

蓮くんは私にハンカチを渡してくれた。
白くて、綺麗に四角く折られていた。

それがなんだか悲しく見えて。

「・・・ごめんっ」



ガラッ



「え、梓っ?!」

「梓ちゃんっ!!」

私は勢い良く道場から走り出した。

なんだか、あの空気が怖くて。
また涙を流すのが怖くて。

とにかく全てが一瞬の内に消えてしまいそうで。

「・・・っ」




怖くなった。




走って走って走って。

ただただ想っていたことといえば、蓮くんが私を追いかけてくれれば良いのに。
そんな期待をしていた。

そう考えると、また涙が出そうになっていた。



ガシッ



「ぇっ」

私は後ろの誰かに腕を強く掴まれていた。

変な期待をしちゃいけない。
分かってる、だけど。

・・・蓮くん。




「・・・梓っ!!」




―――――あぁ。


「・・・一馬」

「逃げんなよっ・・・」

息が荒い。
私のこと、必死で追いかけてたんだ。

・・・でも違った。
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