小指心
悲しい。

蓮くんが来なかったことに悲しみを感じたわけじゃなく。

変な期待をしてしまった私が悲しい。
急に惨めになる。

「・・・もう泣いてないな」

「・・・」

蓮くんが良い、
蓮くんが良い、

蓮くんが、良い。

私の心はその繰り返しだ。

一体なにを考えてるの?

なんで一馬じゃないの?

なんで蓮くんなの?





―――――馬鹿みたい。





「梓、俺さ・・・」

「ゴメン一馬」

「え?」

「今は・・・一人にして」



そう言い残して私はまた、逃げてしまった。



「梓っ・・・」

遠くで聞こえた。
ううん、きっと気のせい。

一馬が私を呼ぶなんて。

「・・・っ!」

何やってるんだ私。

―――――――――――

「・・・ごめんっ」

そう言って梓は道場から走り出した。
それはまるで、俺だけに言っている様に聞こえて。

「・・・くそっ!」

また避けられた。

「・・・」

なんでだ、もう昔の俺達には戻れないのか?
そんなの・・・

嫌だ。

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