小指心
私はお弁当箱のふたをゆっくり開けた。
少し開けた隙間から良いかおりがする、あ、オムライスだ。

「ぇ、ていうか。なに、リタイアって、イタリアの間違い?あ、もしかして私の聞き違い?」

「んー、上手い。座布団一枚」

そのまま様乃はボケ続ける。
そろそろ私も楽しくマイランチを食べたいかなぁ〜?

「あ、そっか。あぁ、なるほどね。ハネムーンの行き先?」

「誰が」

「リタイアって、ハネムーン決まったからもう正式にカレカノで『お試し』っつーのをリタイアって事?あれ、今の説明もしかして違う?」

「いただきまーす」

無視、完璧無視。

「あれ、無視?」

無視。

「なーんて」

「長いよ」

「ていうか、なんかあったんでしょ」

「いや、てかもう食べていいッスか」

私はスプーンを取り出す。
あ、やっぱり。

「オムライスー♪(マジで嬉しい)」

「ねぇねぇ、なにどうしたの」

あんまり、言いたくはないんだけど。
まぁ、様乃は私の友達だし。

カミングアウトしても、大丈夫でしょ。

「・・・実はさぁ」





「ぇ、マジ」

様乃はそんなに驚いてはなかった。
私もなにかと冷静に話せた。

途中で、私これ全部話したら最後に泣くかな?
なんて思ったけど。

全く、むしろ全然。

「ちょ、え、じゃあ。じゃあさ」

「うん?」

私はスプーンに乗せたオムライスを食べた。
あ、おいし〜!!!

やっぱケチャップ最高。

「おい、たかがオムライスに感動してる信条・梓」

「たかがとは何だ、たかかがとは」

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