小指心
月曜日 一週間初め

私はずっと黒板を見つめていた。

『転校生』

チョークで書かれた三文字の言葉、一馬の話を思い出す。
どうやら本当に来るらしい。

「様乃、あの子、来るのかな」

「誰」

「だから南朋って子」

「あぁ、うん。来るけど」

様乃はそっけなく私に返事した、さっきから小説を読んでいる。
私はカバンからノートを一冊、取り出した。

「出たなネタ表」

「違うよ、暇つぶしノート」

私はシャーペンを出し、今起っている事を簡単に書き留めた。
ちょっと可愛い絵も付け加えて。

「・・・『南朋は一馬の元カノ=まだ未練タラタラ』、なにこれ」

「今起ろうとしている事を書き留めてんの」

「・・・馬鹿じゃん」

「馬鹿じゃないよ、暇だから書いてるだけ」

「まぁ、別に良いけど。未来は予測不可能だから、勝手な妄想でもしてな」

「うっわ酷い」

様乃はそう言うとまた小説を読み始めた、つまんない。
とにかく、私は先生が来るまで書き続けた。
これ結構・・・もの凄く楽しいかも。

ガラッ

先生がやってきた、私はノートを机にすかさず隠した。

「起立っ、礼っ、着席っ!」

『おはよーございまーす』

まるで海軍かなにかにいる様だ、さーいえっさー。

「えー、今日は新しい生徒を紹介するぞー」

先生は名前を黒板に書いた、永島・南朋。
南朋の顔を憶えていない私の胸は少し飛んでいた、息苦しくなって窓の方を向いてしまった。

ガラッ

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