小指心

しょうがないんだ。
これが一番正しくて、幸いにも梓ちゃんに被害も訪れない。
目的は分からないけど、最善の譲歩だ。

―――――大好きな梓ちゃんを裏切るわけにはいかないから。

―――――――――――



ピーンポーン



私は蓮くんの家の前にいる、全く意味が分からない。
今日、起こったことを聞きに行く。

だけど・・・なぜか返事がない。


ピーンポーン


「・・・」

私は何度も何度も、しつこいほどベルを鳴らした。
・・・一向に返事の気配がない。

お願い、出て。


もう一回押して、それで出なかったら諦めよう。
私は指をベルに近づけた。


ガチャッ


「っ!」

『はい、遅れました。小山です、どなたですか』

やっと出た・・・

「蓮くん?梓だよ」

『! ちょっと待ってて』


ガチャッ


ベルは切れて、ドアが一瞬で開いた。

「梓ちゃん、なんでココに?」

「ちょっと、今日の事で聞きたいことがあるから」

久しぶりに蓮くんの私服を目にした、Tシャツに紺色のジーパン。

烏が鳴く、もう夕方か。

白いはずの制服は私を黄昏色に染める。
蓮くんがまぶしい、わざと私に見せないようにしているのだろうか。

「・・・入って」

「あ、うん」

私は玄関に上がり、靴をスリッパに替えた。
あ、ふかふかしてる。

リビングに歩いて行って、私達はソファに座った。

「今お茶いれてくるよ」

「あっ、すぐに終わるから良いよ」
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