The World
 だけど、それは一瞬で。より温かい熱が身体に灯る。


「恵太、暑いよ」

ぎゅう、と抱き締める腕は強くて、どこか優しい。温もりが髪から、腕から、吐息から伝わってくる。

「そんなことねぇよ。俺、人間保冷剤だもん」

「何それ。ダサイ」

うるせぇ、と言いながら恵太は更にぎゅうぅ、と腕を強めた。

「うぅ、痛い! ギブギブ!」

あはは、と笑いながらも、恵太の腕はまだきつくて、それでも、私はその痛さが好きだと思ってしまう。いけない事だと分かっていても、離れたくなくて言葉を呑んだ。噛み締めた唇がじんじんして、痛い。


「叶美、痛いの?」

「ううん、……切ないの」

「何で?」

唇から感覚が失われていく。
それに呼応するように、大きな背中に回した手を強く握り締める。その仕種でさえ、皺ができて、母親に不審がられないかと過剰に心配してしまう。

心が満たされる事なんて、きっと私達にはないんだ。

「ねぇ、どうして私達、姉弟なのかな」

「……」

恵太が黙り込むなんて、無性に怖くなる。自分でこの熱を冷ましてしまったような感覚に捉われた。

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