The World
「じゃあね、良いお年を」
クラスメイトが帰り際にそう口にしたのが、耳についた。
皆思い付いたかのように、同じ言葉を返す。
そうか。
クリスマスが終われば、今年ももう終わっていくのか。
教室から出ると、急に寒くなったようで、身震いした。
悴む足は、素直にロッカーに向かう事が出来なくて。
なのに、先生のいる保健室に向かう事も出来ない。
躊躇った足が、ぶらぶらと校内を無意味に徘徊させている。
何やってるんだ、私は。
はぁ、と零れた溜め息に、無性に泣きたくなる。
ダメだ、もう帰ろう。
先生がいないって事を見るのが、知るのが怖い。
ふと窓の外に目をやると、無意識に、いや、意識的にか、保健室の窓が目に入った。
冬の陽光が当たっていたけれど、保健室の明かりがついているのが何となく分かる。
先生――
寒いせいか、それとも、これが焦がれるって事なのか。
胸の奥が震えたような気がした。