The World
 今日は飛びっきり寒い。
冬の日差しなんて、本当にただ明るく照らしているだけみたい。
この調子だと、雪まで降ってきそうだ。
そうなれば、今年はホワイトクリスマスになるのか。

声も掛けられずに、いや、聞けずに、思わずその場にしゃがみこんでしまった。

長閑な景色も、こうも寒ければ寂しさしか感じさせないものか。

白い息が零れては、薄く消えていく。
マフラーに顔を埋めると、自分の吐息が温かくて、何だか泣きそうになった。


突然、頭上で大きくガタガタと古びた音が鳴った。

「何やってんだ、お前」

心臓と一緒に、肩が跳ね上がる。
口の中の言葉が声にならない。そんな事はお構い無しに、先生は「風邪引きたいのか」と溜め息を吐いた。

「き、気付いてたんですか」

動揺が口先に出てしまった。
それに気付いてなのかは分からないけれど、先生は呆れたように笑った。

「窓からコソコソ覗いてたら、流石に気付くわ」

ああ、先生だ。
そう思うと、寒さが溶けていくように、頬が緩んでいった。

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