The World
 部屋の中を覗くと、女子生徒はいなくなっていた。

「ああ、帰った」

私の思考を読み取ったかのように、先生は素っ気なくそう言った。

「で、何?」

え、と躊躇っただけで、先生は「何か用?」とトドメを刺してくる。

「……用がなきゃ、来ちゃダメですか」

なんて素っ気ない人だ。
これがいつもの先生だと分かっていても、ムスッとしてしまう自分が悲しい。


好きだから会いに来ただけじゃ、ダメですか。

なんて言ったら、先生はどんな顔をするだろう。


「いや、」

てっきり、呆れた顔をしていると思った。「ダメに決まってんだろ」とかなんとか言って、あしらわれるんだと。

でも、くるりと私に背を向けて、反応すら見せてくれない。ずるいよ。

「別に」

ぶっきらぼうそのものな言い方。
でも、こんなの、素っ気なくなんかない。

「おい、ニヤニヤすんな」

油断した。横目に見られていたとは思わなかった。
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