The World
○ 依存症

『薬、飲んだ?』

篭った声が温かくて、優しい。

「うん、さっき」

電話越しに、独り頷いてみる。
本当は飲んでいないのだけど。

テーブルの上には、散らばったスティクシュガーと、真っ白な錠剤。

それを一錠摘むと、砂糖も一緒にくっついてきた。
薄暗い月明かりに透けて、キラキラして、綺麗。

『霧弥』

俺の名前を呼ぶ彼女の声が遠退いて聞こえた。返事もせずに、煙草で口に塞ぐ。
黒い煙が肺を通って、身体にぐるぐると循環を始めた。俺を、蝕んでいく。

『今、何してるの?』

「……電話。あと、煙草吸ってる」

そっか、と小さく呟くと、彼女は一度口を噤んだ。

それから、

『来週、やっと会えるね』



声が残響して、じんじんと、頭が痛くなった。
< 7 / 30 >

この作品をシェア

pagetop