幸せの寄り道
お昼になりおばあさんが大荷物を抱えて夏川に会いに来た
「陽向ちゃん、今日ねぇいっぱいプレゼント買ってきたよ」
そう言って荷物を傍に置いて笑いかけていた
「すいません、そんなに。」
陽向のお母さんは申しわけなさそうにおばあさんに言うと、おばあさんは気にするなと笑っていた
「じゃあそろそろ帰ろうかねぇ」
「では送りますね。」
おばあさんは夏川の頭を撫でてまたねと言って病室をでた
「あんた、あの子が見た海見たいだろ?今から帰るとちょうどいいよ」
前を歩くおばあさんは振り返らずにそう言った
「わざわざ時間を合わせてくれたんですか?」
「あんたの為じゃない。陽向ちゃんがあんたに見せたそうだったからねぇ、あの日。」
車に乗ってずっとラジオの音だけが響いていた
だんだん陽も傾きだしてオレンジに染まる頃おばあさんの家に着いた
「さぁ、海に行くよ。」
おばあさんは車を降りて海岸へ向かいはじめた
海岸に着くと夏川の撮った写真と同じような風景が目についた
海も空もオレンジに染まり海面は太陽に照らされキラキラと光っていた
「辞めようとか考えるんじゃないよ?」
「えっ…」
「陽向ちゃんはあの日決心してたんだと思うんだけどねぇ」
「決心?」
「そう、先生であるあんたと自分の立場を考えて今はその時でないと思ったんだろうね」
「それなら俺が辞めて夏川と、」
「陽向ちゃんは自分のためにあんたを辞めさせるとか嫌いだと思うけどねえ」
そう言っておばあさんは海をみて黙り込んだ