幸せの寄り道
私は息を飲んだ
先生は少し髪が伸びて邪魔そうで、少し痩せて前よりも骨格がはっきりしていて
「どうした?」
「ちょっと忘れ物しちゃって!!」
「忘れ物?」
「はい、中入ってもいいですか?」
「あぁ。」
「陽向、入ろっ!!」
「え、うん。失礼します。」
「あまり物をあさるなよ。」
「わかってますよ♪」
私は美咲のそばを離れず歩きまわる美咲の後を追った
そうでもしないときっともたない
この部屋が懐かしくて、先生が近くにいて
「陽向、後ろにいられても…。」
「え?あ、ごめん。」
「先生と一緒にいてよ、そのほうが探しやすいし。」
「……うん。」
私はおとなしく先生の近くに行った。でもやっぱり少し距離をとってしまった
「夏川、元気か?」
「………はい。」
横目で先生を見るとまっすぐ前を見ていて表情まではわからなかった
「今日はなんかいつもと違うな。」
「……はい。美咲が服を選んでメイクもしてくれました。」
「そうか。」
そして少し静かになった
「……夏川、なんで泣いているんだ?」
なんで?
だって……
先生が前と違うから
先生が目の前にいるから
先生の声が聞こえるから
先生に私の声が届いてるから
先生に会えたから
先生が、泣きそうな顔してるから………。