幸せの寄り道



「沙耶?」



「ウチが先生好きなの知っとるよね?」



「うん。」



「よくそんなこと出来るよね」



沙耶が低い声で言った



いつも以上に怒っている



「沙耶!?」



少し不安になって声をかけた



「もう話しかけんで!!」





沙耶はこっちに目も向けずプリントを始めた





私はただ言われたまま静かにプリントをした





周りからは私と先生の話が聞こえた



もちろん、いい内容ではなかった






〈なんか妙に仲良かったし、やっぱ付き合っとったりして?〉



〈先生に遊ばれとるとか!?〉



〈でもこの前2年の中島とも付き合うとかなかった?〉



〈え、夏川さんってそんな人だったん!?〉



そんな話が永遠と続いた




こんな所で泣きたくないから必死でこらえた




このままじゃ先生に迷惑かかっちゃうよ……



でもどうしたらいいんかわからんし




やっぱり昨日断るべきだった




耳をふさいでもやっぱり聞こえてくるみんなの声




早く授業終わって!!






そう何回も心の中で叫んだ








キーンコーンカーンコーン♪





「それじゃあプリントは夏川さんに渡して、夏川さんそれ英語の先生の机置いといてね!!」



「……はい。」




「ほんとに河野先生と付き合っとったりするん?」


クラスの男子は面白そうに笑って言う



「そんな訳ないよ。」



そう言っても誰も信じてなさそうだった


プリントが集まって最後の人のそばに行った


「はい、辛いなら先生に慰めてもらえば?」


彼が笑いながら言うとクラス中が笑いだした



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